床「春来草自生」 花入「備前手桶」‥‥どちらも北大路魯山人

春、魯山人邸に向かうと、一面を黄金色に染める菜の花と春風に揺れるタンポポが迎えてくれる   その のどかな山崎の里へ   魯山人邸の山門までは雪柳が、可愛い雪白の小さな花をつけた枝を伸ばしている 「自然美礼賛」を謳う魯山人らしい路地だ 魯山人が好んで書いた春の詩に 「春色無高下 花枝自短長」 や「春来草自生」を好んで書いている 「春色無高下‥‥」というのは、 春になると上にも下の枝にも平等にやってくるのだが、花や枝は自ら長さや形を選ぶ  同じ陽光を浴びても枝の伸び方は長短があるように 誰にも個性がありその表れ方は様々である ‥‥平等と差別が調和した世界を言っているようだ 魯卿あんの床 「春来草自生」というのは「兀然無事坐   春来草自生」とある言葉からきているようだ 兀然(こつねん)として無事(ぶじ)に坐(ざ)すれば、春(はる)来(き)たりて草(くさ)自(おのずか)ら生(しょう)ず 「自然の流れに逆らわず、春が来れば自然に草が生え、秋になれば葉が落ちる ただじっと座禅をしなさい その時になれば悟りの境地は自然と訪れる」という仏教書からの出典だそうだ イサム・ノグチの紹介でロックフェラー三世夫人が山崎の魯山人を訪ねて来られた昭和28年、ワシントンで『日本古美術展』が開催されるなど日本文化がアメリカでも興味をもたれるようになっていた。 「世にも珍しい備前の土。この土が有つ美しさ、いや美しからざる美しさ、そこに表れている『味』」 と備前土を賞賛す…

続きを読む