周茂叔『愛蓮図手付鉢』‥‥魯山人旧藏
鎌倉山崎にあった『慶雲閣』‥‥
神奈川県文化財となっていた建物で、東南の前庭には魯山人自慢の蓮池があった。
この蓮池、初秋まで色とりどりの花を咲かせていた。
夕方になると蓮池を住処にする牛蛙がいっせいに鳴きだす。
魯山人好物の一つである餡かけムニエルの素材にするのはこの食用蛙であった。
魯山人旧蔵「古染付蓮池図手付鉢」 蓮池に釣り糸を垂らしているのが周茂叔。彼の姿が蓮よりも小さく見える。
古染付の全盛の天啓代に焼かれたものだろうか。純銀の手がついている。
ここに魯山人が蒐めた古染付の作品集『古染付百品集(上巻)』があるが、装丁も魯山人がしたのだろう。
表紙は古染を思わす青海波に小花散らし、題簽も魯山人である。
『古染付百品集(上巻)』
ページをめくると魯山人が愛藏していた「古染附愛蓮圖手付鉢」が載っている。
染付で描かれているのは、中国の故事を題材にした愛蓮図。
中国では花が散った後に、沢山の実(種)を付けることから「子沢山」の願いを叶えるとして愛された。
陶淵明は菊を愛し、林逋は梅、彼らに劣らず、周荗叔(以後、周茂叔)と蓮がよく知られている。
北宋の儒学者・周敦頤(しゅうとんい・1017~73)の字 (あざな) は茂叔(もしゅく)。号は濂渓 (れんけい)。
この手鉢について『古染付百品集』での魯山人の解説は、
「この染付は古調を帯びた方でありまして、土の仕事に妙味があり、図案また最も面白く、おのずから印象のなかなか深いものがあ…