〝用の美〟の探究者 北大路魯山人

唯一無二の芸術家 北大路魯山人  路地の落葉や濡石の具合を確かめ、水の打ち加減から箒の用い方まで一つだって疎かにしない。 四季をいち早く感じ取り、蓮の露の一滴、葉に隠れる虫の音をこのうえなく愛しく思っていた人だった。 その細やかで清新な感性をもって、いつまでも色褪せない根源的な芸術を考究していた北大路魯山人は 他の追従を許さぬ創意工夫を凝らしていた‥‥ 茶道雑誌(河原書店)9月号表紙 「北大路魯山人の特集」で監修、執筆させていただきました。ご笑読いただければ幸いです。   カラーグラビアP5~P20  色絵双魚文皿染付葡萄絵鉢 それぞれ世田谷美術館と足立美術館藏の作品 於り辺長板鉢北村美術館藏 あたりが暗くなりはじめた頃、松林の住処に いそぎ帰る鳥の群れを捉えた ‥‥北村美術館所蔵の織部俎板鉢の名品 本文唯一無二の芸術家 魯山人 ‥‥ 特定の師を持たなかった魯山人は、自然美と古美術品を師としたのであろう、 四季の変化に情緒をかたむけながら、妥協しない真の芸術を考究する…。 「少しずつでも古人の心が読めて来ると実にうれしい。それというのは、自分も古人のように、心で仕事をしてみ たいと思うからである。心あっての形である」 と、こんこんと湧き出ずる当意即妙で、底知れぬ芸術性を世に送りだした。 「感激が傑作を作る」と自己の心を固く信じ、とらわれぬ、生命感溢れる創造力と慈愛によって創りだされた作品そのものが〝自然美〟だと、明確に実証してくれた。…

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