曜変天目‥‥瀬戸毅己"The mystery of Yohen Tenmoku"
曜変天目の謎
‥‥ 漆黒の釉面が光を浴びると瞬く星のような大小の斑点が現れてくる「曜変天目」。
素地は鉄分の多い灰黒色の陶胎。これに光沢のある紫黒の天目釉が厚くかかり、あたかも星が瞬くような瑠璃玉虫色の斑紋が表われることから「曜変」(曜=星輝くの意)と名付けられた。
風流数寄の道を探求した足利義政の「東山御物」にある美の中でも茶碗の王座を占めて珍重されていた曜変天目‥‥その目録である『君台観左右帳記』によれば
「地は大変黒く、濃い瑠璃色や淡い瑠璃色の星型の斑点が一面にあって、黄色や白ごく淡い瑠璃色などが種々混じって、絹のように華やかな釉もある」と記され、
「曜変。建盞の内の無上也。天下におほからぬ物なり。萬匹のものにてそろ」とも記述されているほどの宝物である。
現在、『曜変天目』は世界に三点しかなく、全てが日本の国宝に指定されている。これらの曜変天目は800年前の宋代に福建省建窯の蘆花坪で焼かれたのではないかといわれている。ここには面積12ヘクタール、高さ10数メートルに及ぶ夥しい天目茶碗の陶片や窯道具が散らばっているが、今日まで曜変天目の陶片は一点も見つかっていない。
あるいは浙江省の武義窯で焼かれたものなのか、その出自の謎は深まるばかりである。
上辺だけのものではない 『曜変天目』を再現
志野織部黄瀬戸を追及していた瀬戸が曜変天目を実見して感動を覚えた1990年、『中国陶磁史』という論文に出会い、その中にあった天目の組成を調合して焼いてみ…