小山冨士夫展 「やきものに捧げて」‥‥しぶや黒田陶苑50周年記念
五十周年ご挨拶
思い起こせば、半世紀前の1969年(昭和43年)1月、数寄屋橋で3坪の店を借りて、小さな一歩を踏み出しました。
なによりも多くのみなさまに支えられ励まされて、作り手とコレクターの方々との真剣勝負の臨場感を、執り持つ機会を与えていただきましたのは幸運であったと感じ入っております。
深いご支援の賜物と心より厚く御礼を申しあげます。
これからも「使う楽しみのある美」を追求しながら、近現代の巨匠陶藝家の逸品を厳しい眼で選び皆様にご紹介してまいります。
たゆまず精進を続け皆様と対話をしながら美術商の本道を彼らと邁進してゆきたいと思います。
今後とも“しぶや黒田陶苑”ならびに“魯卿あん“を、なにとぞご指導、ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます
50周年という節目の年、まずは独立する前から公私ともに大変お世話になった小山冨士夫先生の個性あふれる作品を「50周年記念展」の第一弾として一堂に展示させていただきます。
しぶや㈱黒田陶苑 黒田草臣
小山冨士夫先生の想い出
「わたしを焼ものの道に踏み込ませたのも古瀬戸の陶片だし、私をさんざん苛めたのも古瀬戸の陶片である」と『永仁の壷事件』が明るみにでてのちに語られましたが、
小山先生ほど波乱万丈の生涯を送られた方を私は知りません。
大正デモクラシーの最中、社会主義に共鳴して家族の反対を押し切って東京商科大学(現・一橋大学)を三年で中退された。その後、ひとりの労働者として第一歩を踏み出すために蟹工船に乗り…