丸田宗彦 2019年展
肥前武雄の丘に佇む丸田宗彦邸‥‥
ここ唐津古窯址の郷に、登窯と新居を設営したのは三十年以上も前のことになる。
五風十雨の時を経た名庭を見るような木漏れ日の差し込む路地に一歩踏み入れると、踏石と苔の対比が茶趣を湛えて迎えてくれる。
陶芸家には抜群の環境の中、唐津では珍しい穴窯、そして伝統の登窯で焚き続けてこられ、
桃山時代から続く唐津焼を、より伸展させて『宗彦唐津』というべき作品が窯出しされ、その度に目を瞠らせる。
朝鮮唐津壺
桃山の昔、高雅な茶陶を焼いた唐津だったが、江戸の前期から昭和の初期まで長いトンネルをくぐって、
ようやく陽の目を見たのは石黒宗麿をはじめ加藤土師萌、小山冨士夫らの諸先生がその魅力を世に広めた昭和時代になってからだ。古唐津再興とその隆盛を力強く後押しされてきた。
こうした礎のもと、常に研鑽を怠らず、古唐津の魅力を一歩進めた『宗彦唐津』は “やきもの”の面白さで応えてくれた。
斑唐津壺
古伊賀や備前をも凌駕する激しい焼上がり感じさせる斑唐津や朝鮮唐津の壷。
桃山時代に美濃で焼かれた瀬戸黒をも髣髴とさせる引出黒茶盌。
自信のほどを、淀みない描写力で魅せる絵唐津や絵粉引など……
唐津黒茶碗
長男の宗一廊君が武雄の窯で初期伊万里を、益子で修業された次男の雄君も父が育った黒牟田の大きな登窯を継承して絵唐津を追及されているから、丸田に後顧の憂愁はない。その笑顔も晴れやかに感じとられ、将に潮の満つる58歳の春がきた。
丸田宗彦展
会期:…