しぶや黒田陶苑 50周年記念展 『田中佐次郎 自撰 五十』

田中佐次郎先生が30代のころ、安土桃山時代に焼かれた唐津の名窯を足繁く発掘調査されていた。岸岳の斑唐津をはじめ、牛石、阿房谷の絵唐津、そして幻の名窯と謳われた山瀬下窯では絵斑唐津に魅せられ、凄まじい「古唐津再現」への意欲に燃えてこられた。 井戸茶碗独立されて登窯を築かれたのは長閑な田園地帯にある唐津常楽寺の境内。半田川の清流に石橋が架かり、渡ると常楽寺の山門。二階部分が鐘楼堂になっていた。佐次郎先生が40才のころ、その川沿いにある登窯と工房にはじめてお邪魔した。お会いすると穏やかな優しさのなかに、ひとたび斑唐津や加藤唐九郎、小山冨士夫の話になると若武者のごとく眼光炯々となる。辰砂ぐい呑   絵唐津徳利・ぐい呑「高台のチリメン皺に醍醐味があり、土味は明るくて品格を感じさせる山瀬窯を再興したい」といわれ、数年後、山深き山瀬に分け入り、苦行難行のなか荒野を整地して谷川の流れる絶好地に長大な15連房の割竹式登窯を50歳の時に築かれた。耳付花入当苑での初個展は1985年、以後、毎年のように開催していただき、「山瀬築窯記念展」、「30周年記念 三十碗展」、「40周年記念 高麗茶碗展」などその節目ごとに驚愕ともいえる作品を発表されてこられた。瑠璃天目茶碗この度、当苑は50周年を迎えての「田中佐次郎 自撰 五十」展として、初窯以来、挑んでこられた「斑唐津」や李朝古窯址を巡って掴みとられた「井戸茶碗」という佐次郎先生渾身の新作をお願いした。         しぶや黒田陶苑   黒田草臣魯山人「大雅堂」・「美食倶楽部…

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