山田常山‥‥三代目常山のこと

三代山田常山は 朱泥急須つくりの名人 ”朱泥茶注造り”の屈指の名家に生れた三代目山田常山(本名・稔 1924~2005)は、指先に全神経を集中させ轆轤を廻していた。「絶対に尻漏りはしない急須」が、山田家に代々伝わる秘伝だ、という。 私が初めて常滑に行ったのは50年前(1970)。常滑駅からほど近い前田の入り組んだ商店街には小さな映画館が目立っていた。陶業に携わる職工さん目当てだったのだろう。その一角にある常山窯は自宅兼店舗の一階で自作の急須を商いしながら、轆轤を回されておられた。農閑期に自ら田圃で採取した田土を店の裏にある自宅の庭で大甕の中に水を加えて撹拌して、静かに水簸した粘土に、ベンガラを加えて半年以上かけて甕の中で寝かして粘土を造る。そのため軒下には一〇個ほどの大甕が庭を取り囲むようにおかれていた。3代常山作急須五種 こうして熟成させた粘りのある粘土を荒揉みし、ちぎりながら空気を抜き、菊練りして、一つの胴を造る分だけ手廻しの轆轤台にのせ、ベースとなる本体を作った。手元を見ると、まず湯呑のように立ち上げてから腰のふくらみを作り、口つくりを箆で仕上げてトンボ(竹とんぼに似た直径や深さを測る道具)あて寸法を決める。その後、同に合わせて蓋を挽き、細い口の注口や把手をパーツごとに極力薄く轆轤で成形して一、二日ほど半乾燥させる。乾かした各部をカンナなどで削り、注口と把手の角度は直角より、使いやすい八〇度につけ、茶漉しの孔あけは半乾きのとき、胴の外側から竹串で一つずつ開け細かな穴を開けてから胴に注口を取り…

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