宝瓶(泡瓶)とは把手の無い急須のことで、そのまま手で握って茶を注ぐ。
備前の手造り宝瓶は、玉露や煎茶を美味しく飲むには最適といわれる。
その理由は‥‥
備前の土はもっとも水を好むやきもである。水を旨くすると定評があった。
宝瓶(泡瓶)を使ってみる。
焼締陶(炻器)ゆえに注ぎ込んだ茶葉と温めの湯が掌に伝わってくる。
左の掌におき、右手で摩る。備前土の感触がよい。煎れ終わっても摩っていたいほど。
泡瓶 №47w8.3 7.5 H7.8cm
2004年「はつがま −泡瓶−」、2006年には「六十三の心音」に続いて3度目の『泡瓶展』には、
傘寿を記念した作り手・島村光が心を込めた”心音”80点の登場である。
思いがしっかり発酵するのを待って一気に作り上げた泡瓶の数々‥‥
一般の手造り宝瓶のようにゴテゴテとしたつくりではない‥‥外貌を際立たせるシンプルな創りだ。
手を添えれば肌に優しい土味の宝瓶(泡瓶)である。
たっぷりの煎茶や玉露の葉にやや温めのお湯で、煎れたその味は、甘い旨味がでる。

轆轤で作るものではなく、電気窯やガス窯で焼くのではなく、窖窯の心音を聴きながら焼き終えた泡瓶なれば、いうことなし。
蓋とボディを合わせる時、「カン、カン」と金属音がでるほどよく焼きこまれた宝瓶(泡瓶)は、
使えば使うほどに燻銀のごとく輝やき、手放せなくなってくる。

【島村光 陶歴】
1942年 岡山県長船町(現瀬戸内市)に生まれる
1962年 浪速短期大学(現大阪芸術大学短期大学部)絵画科卒業後、工芸関係の職に就く
前衛美術の感化を受ける
1975年 近世の備前焼細工物に惹かれ、陶芸の道に進む
1978年 長船町に穴窯を築いて独立
1987年 寒風陶芸会館に「時實黙水の陶像」制作
1990年 備前市久々井に移り、登窯を築窯
1997年 初個展「十三支 おくれてきたねこ」(しぶや黒田陶苑)を開催
2000年 「ちいさなたからもの 秋から冬へ」(しぶや黒田陶苑)
2002年 「備前細工物に遊ぶ ~窯辺のスケッチ~」(岡山天満屋)を開催 以後、05、07、13年
2003年 「窯場の風景 −作品− 」(しぶや黒田陶苑)
2004年 「はつがま −泡瓶− 」(しぶや黒田陶苑)
2006年 「六十三の心音」(しぶや黒田陶苑)
2010年 「壷」(しぶや黒田陶苑)
2013年 備前市指定無形文化財「備前焼の製作技術」保持者に認定
2015年 岡山県文化奨励賞受賞
「変わらざるものの尊さ 島村光と古陶の共演展」(黒住教宝物館)を開催
2016年 山陽新聞賞「文化功労」受賞 マルセンスポーツ・文化省「マルセン特別賞」受賞
2017年 島村光・金重有邦・隠﨑隆一展(岡山県立美術館) 広島天満屋で個展を開催
2018年 十三支 おくれてきたねこⅣ (LIXILギャラリー) 「貌」(しぶや黒田陶苑)
2019年 岡山県重要無形文化財技術保持者に認定
2022年 土を編む 島村光展(福屋八丁堀本店)
2023年 「八十の心音」(しぶや黒田陶苑)
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